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記憶の棲む場所 :: 2012/11/04(Sun)

fotologue372.jpg
yamaguchi


この間といってももう三ヶ月くらい前だけど
お盆休みが長めに取れたので実家の山口県に帰ってきた。

いつもはコンパクトカメラ一台と替えの洋服やらお土産くらいの
軽装なんだけど時間がわりにありそうなので三脚と一眼レフを持って帰った。

30歳もそろそろ中盤にさしかかりそうな自分を少しだけ振り返ってみようっていう
とりとめのない考えからだ。

目的地は昔遊んでいた場所。

実家は新しく建て直され、離れも改築されており実家は少しばかり
よそよそしい雰囲気に包まれていた。
僕は僕で昔の実家の雰囲気を思い起こそうとしたのだけどなかなか
うまく記憶がのぼってこなくてやめておいた。

前日しこたま友人達と酒を飲み朝タクシーで実家に帰り少し寝て
三脚ケースとカメラバックを抱えて二日酔い特有の鈍く重い頭を
なんとか起こして記憶の棲む場所へ。

僕の実家は山の上あたりあるのでそこから河原までは山を下ってゆかなくてな
ならない、時間にしたら15分程度のものだが道を下りながら何か足りないなっていう
ことがずっと気にかかっていたのだけど河原へおりる最後のケモノ道で気がついた。

昔にくらべて明らかに道路やら周りの家やら、景色が妙にうらびれているのだ。
山の奥なので仕方がないと思っていたのだけど決定的なことがひとつだけ、
子供がいないのだ。
昔だったらここいらは子供が多く常に誰かと遭遇しては挨拶してなんていう
日常が広がっていたのに随分とひっそり静まり返っていた。
もちろん家の中でテレビゲームをして遊んでいるのかもしれないが
僕らの子供時代もそこは一緒だ、余談ながら母から聞いたのだけど、
昔7クラスあった僕が通った小学校も今や2クラスしか残っていないそうだ。
半分も子供がいない計算になる。
僕も独身で気ままに暮らしている身分なので文句はいえないけれど
この物悲しさはどうしたものかと。

坂を下り終え河原へ出た。
ここもやはり誰もいない。
昔と同じく見慣れた家や建物はそのまま残っている。
人も住んでいる感じだ。

とにかく僕がいちばん子供時代を楽しんだメインの釣り場へ。

やはりここも誰もいない。

機材を置きタバコを一本取り出してゆっくりと煙を吸い込む。
モノクロームな記憶にわずかに色が蘇ってくる。
ほぼ毎日のように学校が終わるとすぐに畑にミミズを掘りにゆき
竿をもってこの場所へ。
鯉やらフナやらハヤやらタナゴ、とにかくいろいろとつれた。
浮きを眺めながら過ごした記憶がどんどん蘇ってくる。
今ほど難しいことは考えてはいなかったと思う。
まあ子供なりにいろいろとあったと思うが水面から
浮きが消えてゆくことだけを願いながらじっとまっている。
集中して川の音も遠くへいってしまう感じだった。
浮きが沈み込み2秒くらいまって竿をしゃくり上げる。
びくびくと竿から手へ伝わる魚の手応えを感じながら
ゆっくりと引き寄せ釣り上げる。
釣れた魚はすぐに針を外し逃がしてやる。
もっともきれいな川であれば持って帰って食べていただろうけど
わりと汚い川だったのでそれは出来なかった。

日が暮れてうっすらと暗闇が手を伸ばしはじめるまで
えんえんと同じことを繰り返す。

タバコを一本吸い終え三脚を広げカメラをセットする。
ファインダーを覗いて気がついた。
昔にくらべて川はきれいになり魚影が濃いのだ。
それもかなり濃い。
もったいないな、なんて思うのはこの界隈では僕一人くらいのものだろう。
でないとここまで魚は増えない気がする。
それはそれで良いのかもしれない。
トレンドが移っただけなのだろう。

またトレンドが戻ってきたらこの場所も子供達で溢れかえるだろう、いや
もうそれはないだろうな。

誰もいない河原に乾いたシャッター音だけが鳴る。

悲しくはない、ただもったいない気がするだけだ。

ファインダー越しの僕の目には昔の僕と昔の仲間の笑顔と
カラフルな浮きが見える。

20数年前なんて考えもしない。
でも時間は20数年過ぎている。
僕はおじさんになり周りの連中も父親になっている。

可能性は薄いだろうけどもし僕が父親になったら子供と
ここで釣りをしたいと思った。
昔のように針の結び方を教え、仕掛けの作り方を教え、ミミズのいる場所を教え
ここで僕が釣りをしていたことを教えたい。

撮影を終えてもう一本タバコに火をつけ、ゆっくりと
河原を眺めてみた。
蘇ってきた記憶はもうどこか遠くへいってしまって
今が見える。

誰もいない静かな河原

ただただこの場所だけはなにも変化していない。

ここもそういう場所になってしまった。
現場ではなく記憶の棲む場所に。
  1. photograph & diary
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